ヘルシーレター
おいしいレシピ November 2025
●豆腐を最高においしくいただける湯豆腐
食卓に白い豆腐が浮かんだ鍋を見て、ガッカリした記憶がある方も多いかもしれません。私の実家では湯豆腐というメニューがなく、野菜や肉も入った鍋ばかりだったので、私も大人になってからも湯豆腐には全く興味がありませんでした。
ある時先輩が連れて行ってくれた飲み屋さんで、湯豆腐がおいしいからと勧められ頼むと、出てきたのは平たい土鍋の中で、大きな昆布の上に並べられた豆腐とたれが入った湯呑みが一緒に温められたものでした。たれをこうやって温めれば良いのかと感心しながらいただいた湯豆腐は、びっくりするほどおいしくて、冷奴だとたくさん食べられないのにこの時はおかわりした記憶があります。また、豆腐料理の専門店では、温泉水によって白濁した湯の中で温められた湯豆腐を食べたのですが、それがふわふわでとってもおいしかったのです。どうやらアルカリ性の温泉水で豆腐を煮ると、表面が溶けて豆腐の構造が緩み、独特のふんわり食感になるようです。
自宅で温泉湯豆腐は難しいかもしれませんが、昆布と煮る湯豆腐は簡単なので、湯豆腐のおいしさを知ってからは自分でも作るようになりました。主菜を買ってきたお惣菜で済ませる時でも、小鍋に昆布と豆腐を温め、刻んだネギを添えるだけでもホッとできる食卓になりますし、主菜のボリュームが足りない時は、いろいろな薬味やごまだれも添えると満足感も出ます。また、休日の朝が和食の際に出してみると、ちょっと旅館気分の食卓になって楽しめます。
こだわって国産大豆の高いお豆腐を使ってみたり、たれも作ったりしましたが、湯豆腐をおいしくいただくには、昆布をちょっと贅沢に使い土鍋の中に入れてぬるま湯で戻し、豆腐を入れたらあまりぐらぐらと沸騰させずに静かに芯まで温めるのがコツだと思います。ネギの他にあれば少しの香味野菜を添え、昆布だしが染みた湯豆腐をいただくのが、初秋から始まる我が家の最初の鍋料理となります。
たれを作らず、ポン酢派や醤油だけの方もいらっしゃるでしょうが、私はたれを作るのが面倒な時、市販の麺つゆと醤油を1:1で合わせています。豆腐を温めた昆布だしで少し薄くなるとちょうどです。薬味にはネギと鰹の削り節が必須ですが、麺つゆが入ることで削り節がなくても十分。大根おろしや生姜、七味やすだちを好みで加えても良いですね。
お豆腐を食べた後に残るだしは、香味野菜と共に煮て〆のおじやを作るか、翌日の味噌汁にします。昆布は細切りにして味噌汁の具に。昆布も羅臼昆布や真昆布など良いものを使っても無駄になりません。湯豆腐は体に良い優秀食材をこんなに簡単に、そしてしみじみおいしくいただける最強メニューなのです。
フードコーディネーター 青木幹根子
Healthy Letter from Mineko Vol.259 November 2025




