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このコーナーでは、メディカルライターの松村富代さんから、毎月1通ずつ health & beauty をテーマに素敵な手紙が届きます。

手から心へいのちを育む

料理家そして随筆家でもある辰巳芳子さん、先日テレビで元気なお姿を拝見し、以前取材でお会いしたときを思い出しました。

鎌倉の山懐に抱かれて、紅しだれが蕾をつける一昨年の春、「食」をテーマに雑誌の取材で辰巳芳子さんのご自宅をお訪ねしました。ゆったりとした広いリビングの先には、緑に溢れた庭園が広がっていました。リビングに通じる隣には、大きなテーブルがあり、おそらくここで大勢の方に「いのちのスープ」の作り方などを教えていらっしゃるのだろうと胸がドキドキ。さらにその奥にはキッチンが…。今年84歳になられる辰巳さん、ほんのりと紅をさし、美しい銀髪を束ねられ、明るい色のセーターに身を包んでいました。実にお美しい。当時の取材ノートを開くと、辰巳さんの珠玉の言葉が並んでいます。

『「食」は呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているものです。人のいのちを完成に導く重要な要因となるもの、それは肉体的な完成だけではありません。魂をも作りうるものなのです』

とても重みのある言葉です。ついつい今夜は手抜きでレトルト…と食べることをおざなりにしがちな現代生活です。「手塩にかける」という言葉、辰巳さんはとても大切にしていました。だしをとること、煮ふくめること、食材にこだわること、「食」に関して手間隙惜しまず手塩にかける、自戒の念もあって心にジンと響くものがありました。

『食べることだけではなく、人は歩けるようになるとか、話ができるようになる…など、達成感の中からいのちの手応えを感じ、初めてそこに希望が生まれます。信じることと希望のあるところに、いのちを愛する心が育つのです。自分を信じることができれば人も信じられるし、希望が持てて自分以外の人へのよりよい期待が持てる、自分を愛せない人は人も愛せません』

信じること、希望すること、愛すること、この3つは人の魂、実存の根幹をなすもの。その基本が「食」。だからこそ「食」をおろそかにはできない、辰巳さんは今の日本が失いかけている「食」の根源を見据えていました。 旬を喜び、素材にこだわり、一食一食を大切に暮らすこと、それが尊いいのちをよりよいものにして、未来へ贈っていくことと熱く語ってくださいました。

これからも広い視野と深い洞察に基づいて、ますます元気でご活躍されますことを祈っています。

(メディカルアドバイザー 松村富代)
Healthy Letter from Tomiyo Vol.51 June 2008

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